旅の味わい

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旅の味わい



昔から、趣味でに行ける人を本当にうらやましく思っていました。
というのも、いままで国内、海外を問わず、私のはそのほとんどが仕事がらみだったからです。
旅行というより旅という言い方のほうが好きで、いつかゆっくりとした旅の味わいを楽しみたいという願望が強くありました。
それぞれの土地に昔からある美味しい料理と地酒、そしてあったかいお湯と人との出会い。
これぞ、癒されタイムの本髄ではないかと思います。


そこで思いついたのが、東海道五十三次を江戸時代にタイムスリップして旅をしてみようということです。


◆東海道五十三次「江戸から京まで15日間の旅」
東海道は、江戸日本橋と京の三条大橋間を結ぶ重要な街道でありました。江戸ー京都間に五十三宿が整ったのは、寛永元年(1624年)のことです。
宿は、人馬の継立や旅人の休息・宿泊の便宜を図るところで、五十三次の次とは継と同じ意味だそうです。
宿には本陣や脇本陣が設けられ、これは参勤交代の大名や幕府役人などが泊まる大旅館のことで、それ以外に庶民が泊まる旅籠や茶屋がありました。
庶民の旅の主な目的は伊勢参宮と京・奈良・大坂への参詣と見物で、江戸から京まで、通常15日、駕籠を乗り継げば10日以内ともいわれています。
【五十三次の宿】
日本橋→品川、川崎、神奈川、保土ヶ谷、戸塚、藤沢、平塚、大磯、小田原、箱根、三島、沼津、原、吉原、蒲原、由比、興津、江尻、府中、丸子、岡部、藤枝、島田、金谷、日坂、掛川、袋井、見附、浜松、舞坂、新居、白須賀、二川、吉田、御油、赤坂、藤川、岡崎、地鯉鮒、鳴海、宮、桑名、四日市、石薬師、庄野、亀山、関、坂下、土山、水口、石部、草津、大津→三条大橋


それでは、旅のことわざから江戸時代の旅をチェックしてみましょう。


◆備えあれば憂いなし
まず庶民が旅に出るためには、手続きが必要です。最初に自分の菩提寺と住んでいる長屋の家主に届け出て同意をもらい、身元引受人になってもらい、往来手形を書いてもらうのです。
これが、本人の身分証明書で、旅先で事故があったり、関所を通る場合に必要になるのです。
そして、町内の旅の経験者に話を聞いたり、『旅行用心集』(八隅蘆菴著文化7年)を買って、目を通しておくのです。
箱根と新居に関所があって、男だけなら手形を見せるだけでよいのですが、女性は厳しく、事前に心付けをしておかないと裸にされることもあるということなので、注意が必要です。(関所入り口の茶屋で心得を教えてくれる。)
また、大名行列は4月に集中するので、旅の日程変更や回り道なども考えた方がよいかも知れません。


◆旅は道連れ世は情け 
江戸時代の旅はよほどのことがない限り、一人旅は考えられません。
とにかく旅は道連れであり、旅籠は男一人でもなかなか止めてくれず、まして女の一人旅などありえない話だったのです。


旅の目的の多くは伊勢参りや大山参りで、講などの団体旅行が多かったようです。
そうでない者は、諸国の名所旧跡を見物したり、名物のうまいものを食べたり、宿場で飯盛女と過ごすことが楽しみとなっていました。
一方で旅には危険が伴います。足も痛むし、怪我や病気、盗難や強盗の心配もあります。そこで旅には助け合う旅仲間が必要になるのです。


◆早泊りの早立ち
旅は一日10里(約39km)歩くことが目安となります。そのため、朝の出立を早くしなければ歩き切ることができません。
普通は、夜明け前の七つ(午前4時)に旅立って、安全のためにも日が暮れないうちに旅籠に入ります。
旅籠に着いたらまず、翌朝の出立時間を知らせ、昼食の用意や旅籠の手配を済ませておくのがベターです。


◆旅は憂いもの辛いもの

江戸時代は幕府の防衛政策の一環で、多くの河川には橋が架けられていませんでした。
このことが、当時の旅人の大きな悩みのひとつでもありました。
東海道では、六郷川、馬入川、富士川、天龍川、浜名湖、宮から桑名までの海上七里は船で渡らなければなりません。そして、興津川、酒匂川、安倍川、大井川には船がなく、川越人足を使って渡らなければならなかったのです。雨が降って増水して川留めになると、宿に足留めをくって旅の日程も狂い、出費も多くなります。







◆江戸時代の旅の参考書
江戸時代の旅人が参考資料としたのは主に道中記や道中行程記で、いうなればいまの時代の観光ガイドや旅行記にあたるものです。
『東海道名所記』(仮名草子) 浅井了意著 寛文元年(1681年)
『東海道名所図会』 秋里離島(文)、竹原春泉斎(絵) 寛政9年(1797年)
『東海道五拾三次』(浮世絵) 歌川広重 天保5年(1834年)
『浮世絵道中膝栗毛』(滑稽本) 十返舎一九著 共和2年(1802年) 
『大日本道中行程細見記大全』 安政5年(1858年)
そして極め付きが
『旅行用心集』 八隅蘆菴著 文化7年(1810年)
これは、現代訳版が出版されているので、是非読んで参考にしたいと思います。


ここまで考えてくると、江戸時代の宿場ごとに、現在の詳しい情報やどの程度まで歩いていくことができるのかなどを調べて、具体的な旅の計画を立てるのも楽しそうです。
そして夢を実現させ、東海道五十三次「江戸の旅」を現代版として体験し、『東海道五十三次膝栗毛』平成編をつくって、このサイトで発表してみたいものです。
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