犬のがん(腫瘍)

●犬のがん(腫瘍)

●犬の皮膚がん

皮膚がんは犬のがんのなかでも多い病気です。皮膚が盛りあがり、大小のしこりができます。しこりを手で確認することができます。
ふだんから、皮膚の状態をよく観察していれば、早期に発見できます。

【かかりやすい犬種】
すべての犬種。がんのなかでも肥満細胞腫はとくに、ボクサー、ボストン・テリア、ブル・マスティフ、イングリッシュ・セターなどに多い

【原因】
がんは細胞の異常増殖によって起こります。異常に増殖した細胞が正常な細胞をおかし、やがて全身に転移します。
本来、異常に増殖する細胞があってもそれを抑える「がん抑制遺伝子」が働いていれば、がんの発生を防ぐことができます。ところが、何らかの原因で抑制遺伝子が傷つけられ、がん遺伝子が優勢に立つと、がん細胞が増殖します。
がん抑制遺伝子は、高齢になると衰えるので、高齢になるほど、がんが発生しやすくなるのです。一般に、犬のがん発症年齢は、5〜6歳頃からはじまります。
・遺伝
犬種や個体によって差があるが、がん遺伝子が受け継がれることで、発症する確率が高<なります。
・老化
老化によって、がんを抑制する遺伝子の働きか弱くなったり、それまでの生活環境から受けた要因が積み重なって発症しやすくなります。
・ホルモン
乳がんや肛門周囲の腫瘍では、性ホルモンが関係していると考えられています。
・化学物質
タバコの煙やスモッグ、排気ガスなどの化学物質は、発がんを促す要因と考えられています。
・紫外線・放射線
とくに皮膚がんの発症に深く関係しています。
・ウイルス
白血病や悪性リンパ腺の原因の一つであることがわかっています。
これらのほかにも、外傷や寄生虫の感染もがんの発生に関係していると考えられています。

【症状】
しこりは代表的な症状ですが、すべてががん(悪性)ではなく、良性の腫瘍もあります。しかし、素人ではその判断はつきません。しこりを見つけたら、必ず獣医師に診てもらうことが大切です。
主な皮膚がんの種類と症状は次の通りです。
・皮脂腺腫
 皮脂が分泌される皮脂腺にできるがんです。患部には数センチの脱毛が起こります。
・扁平上皮がん
 皮膚や粘膜をつくる細胞ががん化したものです。耳や鼻の先端部、つめの根元によく発症します。また、高齢の犬や、白い毛の大に多く見られます。
・黒色腫
 黒い腫瘍ができます。黒い毛の犬に多く見られます。
・肥満細胞腫
 免疫反応に関係する肥満細胞ががん化したものです。 しこりのほか、胃潰瘍が起きたり、循環不全などのショック症状が現れることがあります。とくに下半身に現れたものは、悪性度が高いといわれます。
・腺がん
 肛門周囲や耳の内側、鼻腔、直腸などに起こります。しこりが急激に大きくなります。直径が1〜2cmになると、腫瘍の表面が崩れてくることがあります。
・肛門周囲腺腫
 肛門の周囲にニキビのようなブツブツができ、次第に大きくなります。腫瘍が大きくなると、便が出にくくなります。また、おしりを気にしてしきりになめたり、地面におしりをこすりつける動作が見られます。

【予防法】
がんは早期発見・早期治療が基本です。飼い主はふだんから、皮膚の変化に十分に注意し、異変を見つけたらすぐに受診してください。
なかなかなおりにくい皮膚病だと思っていたらがんだった、ということもあります。気になる皮膚症状がある時は、必ず獣医師の診察を受けることが大切です。

●犬の乳がん

乳房(乳腺)にできるがんです。メスに発症するがんの50%以上が、乳がんだと言われます。

【かかりやすい犬種】
避妊手術を受けていないメス犬

【原因】
卵巣から分泌される女性ホルモンが関係していると考えられています。

【症状】
しこりが唯一の症状です。大小も硬さもさまざまですが、乳房や乳頭と乳頭の間などにしこりができます。
しこりには良性のものと悪性のものがあり、次のような特徴があります。
◆良性のしこり
・しこりは皮膚の下にある
・しこりの境界線がはっきりわかる
・しこりがゴリゴリと動く
・しこりの成長スピードが遅い
・しこりは硬くて均一
・ただれたり、潰瘍にならない
◆悪性のしこり
・皮下の深部にまでしこりがおよんでいる
・しこりの境界線が不明瞭
・1〜2か月で急激に大きくなる
・炎症があり、熱を持っている
・しこりの部分をかゆがる
・乳頭から血や膿などの分泌物が出ることがある
・ただれたり、化膿する
・潰瘍ができることもある

しこりが良性か悪性かの判断は飼い主にはできません。必ず、受診して検査してもらいましょう。

【予防法】
乳がんは、避妊手術を受けることで発生しにくくなります。
将来、出産させる希望がなければ、予防のために、避妊手術を受けるのもひとつの方法です。





●犬の腹腔腫瘍

消化器や肝臓、腎臓、卵巣、子宮、膀胱など、腹部にできるがんです。症状が出てからでは手遅れであることも多いので、ふだんと少し様子が違うと感じた時は、すぐに受診してください。

【かかりやすい犬種】
すべての犬種

【原因】
原因は不明です。化学物質や食生活、運動不足やストレスなど、さまざまな要因が重なり、発症に影響していると考えられています。

【症状】
・胃がん 
 嘔吐を繰り返し、治療してもなかなか治まりません。吐血や体重減少のほか、軟便やタール便(黒っぽい色の使)が見られます。
・直腸がん
 肛門に近い位置にできるため、便に鮮血がついていることがあります。
・肝臓がん
 食欲不振が起こり、腹部が腫瘍で大きく膨らむことがあります。
・膀胱がん
 血尿が出たり、排尿に異常が見られます。尿の量が減ったり、頻尿になったりします。
・子宮がん
 膣から持続的におりものが見られます。おりものは、血が混じったような茶色っぽい色をしています。また、腹部が膨れて嘔吐することがあります。

【予防法】
・皮膚のしこりや口の中のできものが、なか なかなおらない。次第に大きくなる
・なおりにくい傷やただれかおる
・理由がないのに体重が減っている
・口や鼻、乳頭、肛門などから血や膿が出る
・不快なにおいや体臭が強<なる
・食餌を食べにくそうにする。飲み込みにくく、吐いたり詰まらせることが多い
・運動や散歩を嫌がる。疲れやすくなっている
・足を引きずったり、体にまひが見られる
・呼吸があらい、浅いなど不自然
・排尿や排便に異常がある
こんな様子が見られたら、がんが疑われます。すぐに受診してください。
早期発見・予防のためには症状だけにたよらず、獣医師による定期検査が欠かせません。

●犬の口腔腫瘍

口の中の粘膜や、歯茎、舌などにできる腫瘍です。犬は口を大きく開けるので、比較的気づきやすいものです。歯磨き時のチェックが、早期発見につながります。

【かかりやすい犬種】
すべての犬種

【原因】
ほかのがんと同様に、詳しい原因はわかっていません。

【症状】
口中のがんは、種類によってさまざまな症状かありますが、共通して現れるのは、次の4つの症状です。
・腫瘍のために、ものを食べづらそうにする
・よだれが多くなる
・口臭が強くなる
・目から出血する
早期発見のためにも、こうした症状を見逃さないでください。

【予防法】
早期発見には、歯磨きの時の定期的なチエックが欠かせません。歯だけでなく、歯茎や舌の状態も観察してください。

●犬の骨腫瘍

骨にできるがんです。大型大の前足に多く見られます。ほかのがんは7歳前後が発症しやすい年齢であるのに対し、骨腫瘍は、2歳前後でも発生することがあります

【かかりやすい犬種】
大型犬に多く見られる

【原因】
現在のところ、はっきりした原因はわかっていません。

【症状】
外傷やねんざなどをした様子がないのに、足を引きずるなど、歩き方の異常が見られます。
また、患部がはれてくることもあります。

【予防法】
早期発見のためには、日頃から歩き方のチエックをしておきましょう。
歩き方に異常があったり、3〜4日たってもひかないはれがある時は、必ず受診してください。

 

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