●犬の骨・関節の病気
●犬の脱臼
関節を構成している骨同士が正常な位置から離れたり、ずれてしまう状態です。
犬に多いのは、膝蓋骨と股関節の脱臼です。
【かかりやすい犬種】
ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、トイ・プードル、ペキニーズ、ミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・プードル、シー・ズー、ゴールデン・レトリーバー、柴など
【原因】
ほとんどは、交通事故や転落事故などで起こります。強い衝撃を受けることによって、関節の骨がずれたり、靭帯などの周囲組織が損傷を受けることで引き起こされます。
また、先天的な奇形から脱臼が起こることがあります。とくに膝蓋骨脱臼は、小型犬に多く見られます。
【症状】
事故などにあい、急激に起こった脱臼では、患部がはれ、強い痛みを伴います。
股関節脱臼でも、脱臼した足をかばい、足を引きずって歩きます。
【予防法】
脱臼が起こると、外傷によるものでも先天性のものでも、足を引きずるようになるので、早めに治療が大切です。
●犬の骨折
骨折はたいへん多いけがのひとつです。事故などで突然起こることが多いので、最初の処置を適切にすることが大切です。
【かかりやすい犬種】
すべての犬種
【原因】
骨折は、大きく「外傷性骨折」と「病的骨折」の2つに分けられます。
外傷性骨折はご父通事故や転落、打撲が原因となります。
病的骨折は、くる病や骨組牡症、骨の腫爽骨形成不全などの病気が原因となります。
【症状】
折れた骨が皮膚を突き破り、多量に出血すると、ショックを起こしてぐったりすることがあります。
四肢の骨折では折れている足を引きずったり、3本の足だけで歩いたりします。骨折した部位によっては、立ちあがることもできなかったり、神経系が障害され失禁することもあります。
【予防法】
犬が興奮している時は落ち置かせて動き回らないようにします。患部を曲げたり伸ばしたりするのは厳禁です。
もし、不自然に曲がっている時は、静かにもとの位置に戻して、ボール紙を当てて包帯や布などで固定します。
●犬の股関節形成不全
大型犬や急に肥満した犬に見られる股関節の病気です。ひどくなると寝たきりになることもあるので、早期発見し、治療やリハビリを行うことが大切です。
【かかりやすい犬種】
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、オーストラリアン・シェパード、グレート・ピレニーズ、コッカー・スパニエル、ジャイアント・シュナウザー、シャー・ペイ、セント・バーナード、チャウ・チャウ、ニューファンドランド、ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シベリアン・ハスキー、柴など
【原因】
原因の大半70%は遺伝的なもので、残りの30%は肥満による負荷や筋肉の未発達によって起こります。そのため股関節形成不全は、小型大よりも大型犬に多く見られます。
【症状】
発症が発育と関係していることから、生後5〜10か月の成長期や太りだした時期などに症状が現れはじめます。次のような症状が当てはまる時は、傷などを負っていないか、まず観察してみましょう。
・走る時に、ウサギ跳 びのように後ろの両足をそろえて動かす
・内股で不安定に歩く
・動くのを嫌がって座り込む
・立ちあがりの動作がスムーズにできない
・歩くとき腰を左右にふる
・階段の上がり降りを嫌がる
【予防法】
適度な散歩を続けながら、脂肪の摂取量を抑え、食餌のカロリーを落とします。おやつの与え過ぎにも注意が必要です。
●犬の膝の前十字靱帯断裂
膝の関節にある、十字に交差している靫帯のひとつが切れてしまうものです。犬の膝の障害のなかで、最も多く見られる病気です。
【かかりやすい犬種】
肥満している犬や高齢犬
【原因】
靭帯は帯状の線維の束で、たいヘん頑丈にできていますが、ここに過度の強い衝撃が加わると、靭帯が断裂したり傷ついたりします。その多くは、交通事故などの外傷や、激しい運動によるものです。
膝関節が脱臼しやすい犬に多く見られ、また近年では、肥満でつねに膝関節に負荷がかかっていたり、老化で靭帯が弱くなっている犬に起こるケースも増えています。とくに、室内で飼われている4〜5歳以上の肥満した小型犬に多く見られるので、注意してください。
【症状】
前十字靭帯が断裂すると、次のような症状が現れます。
・後ろ足に体重をかけることができず、足を引きずって歩く
・断裂が起こった足を持ちあげて3本の足だけで歩く
・足を伸ばさせようとすると嫌がる
・膝関節が熱を持ち、はれる
【予防法】
肥満は関節に大きな負担をかけるため、さまざまな障害の原因になります。
予防のためには、子犬の頃から、肥満に注意することが大切です。また、適度な運動によって関節や筋肉が鍛えられると、靭帯断裂も起こりにくくなります。
●犬の椎間板ヘルニア
脊椎(背骨)はたくさんの椎骨から成ります。椎骨と椎骨の間には、椎間板という軟骨がはさまれています。
この椎間板が何らかの原因でつぶれ、その内容物がはみ出した状態をヘルニアと言います。
【かかりやすい犬種】
ダックスフンドなどの胴長短足の犬種、シー・ズー、パグ、大型犬など
【原因】
椎間板は髄核という柔らかい内容物を、丈夫で弾力のある線維輪が取り巻いています。
事故などで強い衝撃を受けたり、過激な運動をしたり、また老化などで椎間板が変形すると、椎間板の線維輪を突き破って髄核がはみ出してしまいます。
そして、はみ出した髄核が脊髄を圧迫するために、さまざまな症状が現れます。
【症状】
初期には、患部に痛みがあるため、触られるのを嫌がります。
腰に起きた場合は、歩く時にふらついたり、歩き方に異常が見られます。場合によっては、排便障害や排尿障害、後半身にまひが起こることもあります。
●犬のレッグパーセス病
レッグ・ペルテス病ともいいます。生後1年以内ぐらいの子犬や幼犬がかかる病気です。
【かかりやすい犬種】
ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、オーストラリアン・テリア、シルキー・テリア、パグ、フォックス・テリア、マンチェスター・テリア、ミニチュア・シュナウザー、ヨークシャー・テリアなど
【原因】
股関節に障害が起こる病気です。大腿骨の骨頂は骨盤のくぼみにはまり、股関節を形成しています。この大腿骨骨頂へ流れる血液が何らかの原因によって障害されることによって、骨頭が変形したり、壊死してしまいます。
【症状】
大腿骨の骨頭が変形したり、壊死してしまうために、股関節が正常に動かせないことから、突然、足を引きずるようになります。
【予防法】
生後4〜12か月の体重が10s以下の小型犬に多く、とくに生後7か月前後に起こることがわかっています。
早期に動物病院で治療を受けないと、歩行障害の後遺症が残ることがあります。