猫の心の病気
群れをつくらない猫社会には、無益な争いを避けるために特有のルールがあり、状況に応じて譲り合い、挨拶することで均衡が保たれています。顔見知りの猫が出会った場合は、鼻や肛門周囲の臭いをかぐ挨拶をかわし、敵意のないことを示します。
ある一定の範囲を越えると、攻撃に転じます。歯やツメを使う完全な攻撃行動、うずくまリ耳を後ろに引いてシヤーッとうなる行動、全身の毛を逆立てて尾を逆U字型にするなどさまざまです。形勢不利な場合は服従せずに逃走します。
●猫のオス猫の攻撃性
【原因】
オス猫は、胎児期に男性ホルモンの影響で脳がオス性化します。
思春期を迎えると性ホルモンが分泌されて闘争心が強化され攻撃します。
【症状】
発情期には相手のメスを獲得するためにオス同士で激しく争います。
【治療・予防法】
去勢をすることで、約90%のオスの攻撃行動をコントロールすることができます。
繁殖する予定のない場合、とくに猫が数多く棲む地域は去勢をし、ほかの猫との接触をなるべ<避けることがケガや病気の感染予防にもつながります。
●猫のテリトリーを守る攻撃性
【原因】
自分のテリトリー(縄張り)を守るために、見知らぬ猫がテリトリー内に侵入した場合、威嚇し追い払おうと攻撃します。
【症状】
自分のテリトリーの外に出てしまうと攻撃性は低下します。
テリトリーを守る攻撃性はメス猫や去勢・避妊済みの猫にも見られます。
【治療・予防法】
猫は、社会的な空間や距離を必要とします。とくにオス猫は縄張り意識が強いので、複数飼いの場合は過密にならないように気をつけましょう。
●猫の痛みからくる攻撃性
【原因】
病気やケガによる痛み、心理的な不快感などから攻撃的になります。
【症状】
なんらかの病気による激痛や慢性的な痛み、外傷や骨折などの痛みなどがある場合、触られることをいやがり、攻撃性を示します。
また、毛や尻尾を引っぱったり、強く抱きしめると、痛みや不快感から攻撃することがあります。
【治療・予防法】
病気やケガの痛みによる攻撃性は、快復すれば改善するので、早めに適切な治療を行ってください。
また、猫がいやがったリ怯えたりするような接し方はしないよう心がけてください。
●猫の恐怖による攻撃性
【原因】
5〜7歳で社会化の時期に、人や他の動物に接触する機会が極端に少なかった場合、人や動物、見慣れないものをこわがり、ある一定の距離まで近づくと恐怖のため攻撃的になります。
【症状】
母猫と早く別れた子猫はうまく社会に同化できず、極端に人につきまとったり些細なことで家族以外の人や他の猫に攻撃的になりがちです。
●猫の母性本能による攻撃性
【原因】
子育て中の母猫は、子猫を守るため平常より神経質で攻撃的になります。
母性による攻撃性は、性ホルモンと子育ての環境により左右されます。
【症状】
出産まぎわや保育中の母猫は、不注意に子猫などに触ろうとすると、穏やかで人によく慣れている猫でも豹変し、死に物狂いで人や他の猫を攻撃します。
【治療・予防法】
静かで安全な環境を整え、緊張を和らげることが必要です。
子猫への接触は慎重に行い、母猫が拒否した場合は従いましょう。
母猫が極端なストレスにさらされたり低栄養のときは、子猫を食べてしまうこともあるので注意しましょう。
●猫の学習による攻撃性
【原因】
攻撃することで猫にとって不快な状況が改善された場合、それを学習することがあります。
【症状】
例えば、ブラッシングの大嫌いな猫が、威嚇や攻撃でそれをまぬがれた場合など、「プラッシング→攻撃→成功」の図式を学習します。
次回からは、ブラッシングしようとするときにまぬがれようとして、攻撃するようになるのです。
【治療・予防法】
猫がいやがるブラッシングや歯磨きは子猫のうちから慣らし、無理強いせずにやさしく少しずつ行ってください。