猫の感染症
猫の感染症は、ウイルスなどが原因で伝染する病気で、犬に比べて多くの伝染病を持っています。公園の砂場、猫同士の接触やケンカ、感染猫の使った食器などから病気に感染する確率も高くなっています。
感染しても、ウイルスを持ったまま発病しないこともあり、ペットショップなどで購入した猫や拾った子猫が、なんらかの感染症だったということはめすらしくありません。
飼っている猫が知らないうちにキャリアになっていて、新しく迎えた猫に移してしまうこともあります。
病気を広めないためにも、ワクチン接種をする、飼い猫を外に出す場合は去勢・避妊をして他の猫との接触を少なくする、定期的にウイルスの検査や健康診断をするなどの健康管理が大切です。
●猫のネコ伝染性腸炎
【原因】
子猫、若い猫が感染しやすく「猫ジステンパー」といわれます。感染してから3〜4日で症状が出る急性伝染病で、とくに秋から春に多く発生します。
ウイルスが原因で、ネコ汎白血球減少症、ネコパルボウイルス感染症ともいいます。伝染力、生命力の強いウイルスで、感染している猫の便や尿、唾液のほか、人のクツや手などについても感染します。
【症状】
初期症状は元気がなくなリ食欲不振と高熱、次第に嘔吐が激しくなり、下痢が起こります。食事や水はまったく受けつけず、激しい脱水症状が出て、体温が下がることがあります。
【治療・予防法】
水分や栄養の補給と、脱水症状のための輸液、二次感染を防ぐための抗生物質の投与が中心になります。
回復した猫には強い免疫力がつきまが、子猫のうちに混合ワクチンの接種を受れば高い予防効果があります。
●猫のネコ伝染性呼吸器感染症
【原因】
ヘルベスウイルスによるネコウイルス性鼻気管炎(FVR)と、カリシウイルスによるネコカリシウイルス感染症(FCR)、ネコクラミジアという病原菌によるクラミジア感染症があり、感染した猫に接触すると、その猫の鼻水、くしゃみ、便などから感染します。
【症状】
いわゆる「猫の風邪」で、秋から冬にかけて流行します。3〜4日の潜伏期の後に、発熱、食欲不振などが表れ、涙目、鼻水とくしゃみ、鼻づまりがひどくなり、結膜炎も併発します。
2週間以内には回復しますが、抵抗力がおちたところに別の細菌感染が起こると、症状が悪化して長引きます。回復後はキャリアになり、免疫力が低下したリストレスを受けたときに再発します。
【治療・予防法】
対症療法が中心です。
子猫のうちに混合ワクチンの接種を受けておけば、感染しても軽い症状で済みます。
●猫のネコ白血病ウイルス感染症
【原因】
ネコ白血病ウイルスの感染によってかかる慢性の病気で、唾液やケンカの傷、キャリアの猫が使った食器からも感染します。
【症状】
最初は、発熱、下顎リンパ節の腫瘍、下痢が起こります。猫の体には強い抵抗力があるので、その後はウイルスがなくなるか、発病せずキャリアになると症状は消えます。
キャリアの猫が発病すると、白血病を起こしやすくなります。また、免疫力が低下する免疫不全になり、傷が治りにくく、口内炎や腎臓病なども起こします。
【治療・予防法】
感染しているかどうかは、血液検査で調べます。
ワクチンを接種後、感染した猫との接触を断つために外出させないことで予防します。オス猫は去勢することが一番有効です。
●猫のネコエイズウイルス感染症
【原因】
猫同士のケンカの傷で、ウイルスを持つ猫の唾液や血液からの接触感染がほとんどです。
人間のエイズと似ていますが、別のウイルスなので感染の心配はありません。
【症状】
ネコ免疫不全ウイルス感染症ともいいます。感染して数週間から1年間くらいは、リンパ腺が腫れたり、軟便が続いたりする程度のキャリアの状態です。
数年たつと慢性の病気や□内炎が多くなり、病気に対する抵抗力が落ちはじめます。
さらに悪化してエイズの段階になると、痩せはじめ、ほかの感染症や腫瘍を併発して死亡します。
感染しても症状が出ないまま、長生きする猫も多くいます。
【治療・予防法】
ウイルスを死滅させることはできないので早期発見が大切で、血液検査で調べます。ワクチンがないので、室内飼いをすることが一番の予防です。
エイズの状態になる時期以前であれば、正しい対症療法や抗生物質の投与で命をとりとめることも可能です。
感染しても、室内でストレスを与えずに飼えば、寿命をのばすことはできます。
●猫のネコ伝染性腹膜炎
【原因】
コロナウイルスが原因で発病し、ネココロナウイルス感染症ともいいます。感染猫の尿を介して、□や鼻から入り、気管や腸で繁殖、せきなどでほかの猫へ感染します。
腸に感染しただけの場合は、一時的な軟便や下痢の軽い症状ですが、感染後、免疫力が低下すると、ネコ伝染性腹膜炎になります。
【症状】
湿性型(ウエットタイブ)と乾性型(ドライタイブ)があります。
湿性型は、慢性の血管炎を起こし、腹や胸に水が溜まって肺が圧迫され、呼吸が苦しくなります。徐々に痩せてきて、目が濁ったり貧血を起こします。
乾性型は、目に角膜の浮腫や虹彩炎が表れ、脳に感染するとけいれん、麻痺などの神経症状、腎不全などを起こします。
【治療・予防法】
腹や胸の水を抜き、免疫抑制剤による治療を行います。
予防ワクチンはないので、室内飼いを守り、ストレスのない生活環境で免疫力を高めることが予防につながります。