猫の不思議な行動のわけは?
●うっとり気分でなでられていたのに突然爪を立てる・・・そのわけは?
猫は体をさわられる強さや長さによって、うっとり気分がイライラに変わります。
猫の毛の根元が感覚神経とつながっていて、毛をなでられたりすると、ほどよく刺激を受けてウットリするのです。
特に猫が好きな急所(首筋やあごの下、おしりやおなか)を、信頼できる人にさわられるとすごく気持ちがいいものなのです。
しかし、なで方が強かったり、しつこかったりすると、「気持ちいい」は「不快」に変わり、急に人に噛みついたり爪を立てたりします。猫は苦痛に感じると、「もうやめて!」のサインを出します。イライラしたようにしっぼを振ったり、瞳孔が大きくなったりするのです。
苦痛に感じて腹を立てた後、猫は、今度は自分で自分の体をなめることがよくあります。これはなめることで乱れた毛並みを整えながら、興奮した気持ちを静めようとしている行動で「転位行動」と呼ばれます。
■猫の「ことば」にすれば
「もう いいかげんにしてよネ」
「しつこいのは嫌い!」
■飼い主としては
飼い主としては、このサインに早く気づくことが大切です。
●新聞を広げて読んでいると必ず上に乗って邪魔をする・・・そのわけは
猫は飼い主が自分以外のモノに夢中になるのは気に食わないと思っているのです。
本や新聞を広げて読んでいると、いつの間にか猫がやってきて、どっかりと上に座ることがよくありますよね。しかも熱中して読んでいるときに限って、邪魔をしにきます。
実はこれは、飼い主に対して「私をほったらかしにして、いったい何してんの!」という猫の気持ちなのです。猫にしてみれば、新聞を読んでいる飼い主の姿は、ある一点をじっと見つめているかのようにうつります。「何があるのかな」と思って近寄ってみても、何もありません。大事なニュースやベストセラーの小説も、猫にとってはただの紙切れの集まりでしかありません。
猫としては「自分以外のわけのわからないものに夢中になるのは気に食わない。もっとわたしも見てちょうだい」とばかりに本や新聞の上に乗ってくるわけです。
同じように、パソコンの画面に集中している時も気に食わないのか、パソコン画面の前に来て邪魔をします。
「かまわれすぎるのもイヤだけど、無視されるのはもっとイヤ」という猫の性格がよく出ています。
■猫の「ことば」にすれば
「私をほったらかしにして、いったい何してんの?」
「かまわれすぎるのもイヤだけど、無視されるのはもっとイヤ!」
■飼い主としては
下手にどかせようとすると、怒って噛みついてきたりします。たとえ無事にどかせることに成功しても、しつこくまた乗ってきたりします。
飼い主としてはしばらく一緒に遊んであげるか、邪魔されないように新聞や本を手に持って読むしかありません。
●人の足におでこや体をこすりつけてくる・・・そのわけは?
猫は大好きなものに自分のにおいをつけて、自分のものだと主張しているのです。
猫がすりすりしてくれるのは、飼い主にとって何といっても一番うれしいものです。残業などで夜遅く帰宅したときに、猫が玄関まで出迎えに来て体をこすりつけてくると、「なんと甘えん坊でかわいい子なの!」なんて思いながら大喜びして、たちまち疲れが吹っ飛び元気になってしまいます。
しかしこれは、単に甘えたいだけの「すりすり行為」ではありません。体の特定の部分をこすりつけようとして、伸びあがったり、体をくねらせたり、ときにはしっぽをぐるりと巻きつけたりしているのです。
猫のおでこや口の両端、あごの下やしっぽの付け根などには、においを分泌する臭腺があります。猫は身近にあるものや愛情を感じているものに対して、この臭腺から分泌される物質をこすりつけることで、「アタシのにおいをつけたから、もうアタシのモノよ」と主張しているわけです。
猫にすりすりされている飼い主の体には、その猫のにおいがいっぱいつけられています。猫は家の中の家具などにもにおいをつけます。周囲が自分のにおいで満たされているほど、猫は安心してリラックスできるのです。
■猫の「ことば」にすれば
「アタシのにおいをつけたから、もうアタシのモノよ」
■飼い主としては
猫がすりすりしてきたら、あなたもスキンシップであなたのにおいをつけてあげましょう。
お互いのにおいを交換すればもっともっと猫と仲良しになれますよ。
●ゴロゴロのどを鳴らす・・・そのわけは?
猫がリラックスしているときになでてあげると、いかにも気持ちよさそうにゴロゴロという音を出します。
このゴロゴロという音がどこから出ているかについては、専門家でもはっきり分からず、さまざまな説が出されていました。
近年なってもっとも有力な説とされているのが、仮声帯説です。猫には普通の声帯とは別に喉頭室皺壁と呼ばれる仮声帯があって、そこにある喉頭筋が振動(毎秒30ヘルツ以上)することで、ゴロゴロという音が出るというものです。
猫は気持ちよいとき以外にも、ごはんがほしいときや遊んでほしいときなどに、飼い主におねだりするかのようにゴロゴロと音を出すことがあります。
猫が生まれてから最初にゴロゴロと音を出すのは、母猫のお乳を飲んでいるときで、母猫はそれを聞いて、子猫がしっかりとお乳を飲んでいることを理解します。猫がゴロゴロのどを鳴らすのは、安心と信頼のサインといえるでしょう。
■猫の「ことば」にすれば
「気持ちよくて 安心だなぁ」
■飼い主としては
猫は病気やケガなどで体の調子が悪いときにも、ゴロゴロと音を出すことかあります。苦痛から逃れたいために、自分でリラックスしようとしているのかもしれませんので、よく注意して見てあげましょう。
●お風呂に入りたがらない・・・そのわけは?
猫の祖先は砂漠出身だから、水風呂より砂風呂のほうが好きなのです。
猫は水に濡れるのが大の苦手です。そのわけは、猫の祖先にあります。
猫の祖先をたどっていくと、北アフリカやアラビア半島などの砂漠地帯に住んでいるヤマネコのリビアネコに行きつきます。砂漠では雨がほとんど降らないため、猫の先祖は砂の上を転がり回ることで体の汚れを落としてきました。この習性からか、現在の猫も砂が大好きで、砂場を見るとゴロゴロしたがる猫は少なくありません。
また、猫の被毛は犬と違って防水性が低く、水に濡れるとべったりと体にくっついてしまいます。
砂漠では、昼と夜の温度差が激しいので、猫が水に濡れたまま夜を迎えたら、気化熱で体温が急速に奪われてしまいます。猫にとって体を水で濡らすことは生死にかかわる大問題なので、だから、水をイヤがるのです。ただし、ボプキャットやスナドリネコなど、種類によっては泳いだりするもものもあります。
■猫の「ことば」にすれば
「お風呂嫌いはご先祖様ゆずりなのだ!」
■飼い主としては
特別な理由がなければ、基本的には猫のお手入れは毎日のブラッシングで十分です。
ただし、どうしても洗いたいという場合にも、抜け毛・毛玉は取ってから、顔はシャンプーせずにふくだけ、吸水タオルでしっかりドライ、などの注意が必要です。
●毛づくろいした後に、舌を出したまま眠ってしまう・・・そのわけは?
毛づくろいで舌の筋肉が疲れてゆるんでしまうのではないでしょうか。
毛づくろいをした後に、舌を出したまましまい忘れて、そのまま眠ってしまう猫がいます。とても愛くるしい寝姿なのですが、どうして舌を出したままなのでしょうか。
猫の下の前歯を門歯といいますが、この門歯が短い猫は多いのです。門歯が短いと舌が歯の内側におさまらずに外に出てしまうのです。またベルシャネコなどの短頭種の猫は、あごがほとんどないために、物理的に舌が外に出てしまいます。
では、なぜあごの長さが正常な猫が、毛づくろいの後、眠ったまま舌を出すことがあるのでしょうか。
はっきりした理由はわかりませんが、毛づくろいのときは舌を激しく動かして舌の筋肉をたくさん使うので、舌が疲れる猫もいるようです。
本来舌は、口を閉じると元の位置に戻るようにできているのですが、舌の筋肉が疲れてこの反射運動がにぶくなり、それで舌を出したまま熟睡してしまうのではないかと思われます。
あごか短く毛が長いヒマラヤンなどに多く見られるのも、毛づくろいがたいへん重労働なだけに、舌の筋肉が疲れきって余計外へ出やすくなるのかもしれません。
■猫の「ことば」にすれば
「毛が長いと結構疲れるのよ」
■飼い主としては
舌を出して寝ているからといって、健康状態に問題かあるわけではありません。飼い主としては、安心して、かわいい寝姿を見守りましょう。
●いたずらされるとあくびをする・・・そのわけは?
眠いからするのではなく、緊張した気持ちを静めるためのあくびです。
丸くなって寝ている姿があまりにかわいいので、ついいたずらをしたくなるときがありますよね。寝ている猫の頭をぐりぐりしたり、ひげを引っ張ってみたり・・・。すると、びっくりして目を覚ました猫は、大きなあくびや伸びをします。
このときの猫に気持ちは、眠くてあくびや伸びをしているわけではありません。「気持ちよく寝ているのに、なにするのよ〜」と腹を立てて、その気持ちを落ち著かせるためにあくびや伸びをするのです。
このように猫が緊張状態にあるときに、違う行動をすることで気持ちを静めようとすることを、「転位行動」と呼びます。
「転位行動」には、あくびのほかにも、毛づくろいや舌なめずりなどがあります。
たとえばそれまで夢中になってネコじやらしを追いかけ回して遊んでいた猫が、突然遊びをやめて毛づくろいをはじめることがあります。遊びに飽きたわけではなく、興奮した気持ちをおさえるための行動です。
また、イライラした気持ちをまぎらすためにぺろりと舌なめずりするのも、「転位行動」のひとつです。
■猫の「ことば」にすれば
「気持ちよく寝ているのに、なにするのよ〜」
■飼い主としては
転位行動をよく理解しておけば、猫の気持ちをより正確に把握するのに役立ちます。あくびをしたからといって眠いのではなく、何かに気分を害しているのかもしれません。猫は私たちとは違った方法で、気持ちを表現しているのでよく観察するようにしましょう。
●名前を呼ばれると面倒くさそうにしっぽを振る・・・そのわけは?
母親気取りで聞き流す猫流の生返事です。
猫にとっての飼い主は、ときには母親であり、ときには子どもでもあります。
「たまちゃん、たまちゃん」と名前を呼んでも、面倒くさそうにしっぼを2〜3回振って応えるだけというときがあります。明らかに「はいはい、聞こえてますよ、もう しょうがないなあ」といった態度です。このときの猫は、まとわりついてくる子どもを、適当にあしらっている母猫のような気分なのです。
一方で、飼い主に甘えたくてすりすりしてくるときや、ごはんがほしいと催促しているときの猫のしっぽは、ピンと立っています。これは、甘えん坊の子猫気分になっているのです。
本来しっぽを立てるのは子猫の特徴です。生まれたばかりの子猫は、自分の力でウンチやオシッコができないので、母猫におしりをなめてもらい、その刺激で排泄をします。そのとき子猫は、邪魔にならないようにしっぼをピンと立てています。その習性が残っていて、成猫になっても、甘えたいときはいつもしっぼを立てるのです。
■猫の「ことば」にすれば
「はいはい、聞こえてますよ、もう しょうがないなあ」
■飼い主としては
飼い主を相手に、子猫になったり、母猫になったり・・・その時々のシチュエーションで役割を演じ分ける猫の二面性が、「猫は気まぐれ」といわれる猫の魅力かもしれませんね。
●寝ているときに体の上に乗っかって寝る・・・そのわけは?
あったかい場所であなたより優位に立ちながら、それでも甘えていたい気持ちです。
あなたが寝ているときに、ふとんの上、とくに体の上に猫が乗っかってくることがよくあります。「たまちやん、重いよぉ」なんて文句を言いながらも、あなたは幸せ気分♪。
猫が飼い主の体の上で寝ようとするのは、ひとつには温かいからということがあります。でもそれ以上に、飼い主のにおいのする場所のほうが、安心して眠れるからというほうが大きいのではないでしょうか。
夜、飼い主がベッドに入るとついてくる猫も多いですが、体の上に乗ってきて寝たがる猫もいれば、飼い主のわきに寄り添うように寝る猫もいます。
体の上に乗ってくる猫は、そばにいたいという子猫気分と、体の上に乗ることで飼い主より優位に立ちたいというボス猫気分が入りまじっています。こうした猫はしばしば、飼い主の胸や顔のあたりで寝ようとします。冬の朝、猫の重さに耐えかねて目が覚めたという経験はあなたにもあるでしょう。
■猫の「ことば」にすれば
「たまちやん、重いよぉなんて言わせないわヨ」
■飼い主としては
ネコが快適に感じる温度は20〜28度くらいといわれています。この温度より高くなると、いくら甘えん坊の猫でも、飼い主の体の上に乗ろうとしなくなります。猫といっしょに寝るのは、秋から冬にかけてが一番と心得ておきましょう。
●動くモノを見ておしりを振る・・・そのわけは?
忍び寄って獲物を捕まえる前の武者震い?それとも・・・
猫がもっとも得意とするハンティングの対象は、ネズミやスズメなどです。
猫は獲物を捕まえようとするとき、草むらなどの物陰に身を隠し、頭を低くして、待ち伏せの姿勢をとります。そして獲物が射程距離に入ると、待ち伏せポーズから獲物に跳びかかり、一瞬でしとめるのです。
このとき、ジャンプする直前にタイミングをはかるため、おしりを小刻みに振ります。このときのしっぽは、早く捕まえようとする興奮とちょっと待てという冷静な気持ちが入り混じってピクピク動いています。
草むらがない現代の猫たちは、かわいそうに身を隠す場所がありません。それでも、動くものを見つけると、獲物を捕まえようというときの気持ちで、身を低くして待ち伏せのポーズをとります。もちろんおしりもしっぼも揺れています。
■猫の「ことば」にすれば
「落ち着けぇ それいくぞ 5ッ4ッ3ッ2ィ・・・・」
■飼い主としては
猫は「天性のハンター」だといわれます。でもその能力を存分に発揮できるのは、草むらなどの身を隠す場所がある場合です。我が家の庭は、芝生ばかりで身の隠し場所がないと思っているかもしれません。
●人のくるぶしめがけて飛びついてくる・・・そのわけは?
猫の目の高さで動き回るくるぶしが、恰好の獲物に見えてしまうのです。
猫は狩りが大好きで、虫や鳥を見つけると、本能的に夢中になって追いかけ回します。
しかし、マンションなどでの飼い猫は、そういう遊びをする機会があまりありません。そのうえあなたがあまり遊んであげなかったとしたら、退屈で猫のストレスはどんどんたまる一方です。
そこで、あなたの“くるぶし”が恰好の標的になるのです。くるぶしはちょうど猫の目の少し下ぐらいの高さで右へ左へと動き回るものですから、猫としてはもう我慢できません。ハンターとしての本能をかき立てられ、つい跳びついてしまうのです。
くるぶし以外にも、人の体で木登りをしたり、手や足に攻撃を仕掛けてきたりする猫もいます。
飼い主への攻撃をおさえるには、普段からオモチャで遊んであげたりして、猫の狩猟本能を満足させることが大切です。ただし遊んでいるうちに興奮して、飼い主に跳びかかったりすることもあります。興奮したら、静かに相手をして落ち着かせましょう。
■猫の「ことば」にすれば
「ウヒィ〜 めっけたぞ!」
■飼い主としては
遊び盛りの子猫は、どんなに遊んであげてもなかなか満足しないものです。子猫か手足にじゃれつくのはかわいいものですが、常習化すると手に負えなくなります。
噛んだり引っかいたりしたら「痛い!」と叫んで遊びを止め、してはいけない行為であることを教えましょう。
興奮がなかなかおさまらないときは霧吹きなどでサッと水をかけるのも、ひとつの方法です。
●家の外で飼い主に会ってもよそよそしい・・・そのわけは?
家の外でのネコ社会のあいさつはそっぼを向くのが礼儀なのです。
猫には内面(うちずら)と外面(そとずら)があり、家の中にいるときと外とでは、猫の気分は異なります。家ではあなたに思いっきり甘える子猫気分でいられても、一歩外に出れば、それでは通用しません。成熟した1匹の猫として、外の世界のルールを守る必要があります。
そんな外の世界の大切なルールが「相手の目を見ない」ということです。散歩中に猫同士かばったり出会ったとき、お互いに知らん顔して通り過ぎるのがネコ世界の礼儀なのです。
相手の目を見続けることは、ケンカを売っているとみなされるからです。あらかじめ、下手な接触をしないことが、無駄なケンカを防ぐための生活の知恵なのです。
だからあなたに対する猫の態度が、家の中と外で違うのは当たり前。外でよそよそしいのは、あなたの猫が冷たくしているのではなくて、礼儀正しいからなのです。もしかしたらあなたのことを「自分よりも上位にいる猫」と感じていて、よけいに礼儀正しくしているのかもしれません。
ちなみに、もしあなたが外でよその猫と仲良くなりたいなら、猫の目をじっと見たりしないことです。「郷に入っては郷に従え」でネコ社会のルールを守りましょう。
■猫の「ことば」にすれば
「プイッ 知〜らない (でも これが礼儀なんだよね)」
■飼い主としては
猫は遠くにあるものはぼんやりとしか見えないので、あなたをあなたとして認識していない可能性も考えられます。よそよそしいときは少し近づいて名前を呼んであげましょう。
それでもよそよそしい態度のままなら、ネコが礼儀をわきまえている証拠だと思ってください。